久しぶりに長い距離を歩きたいと思いました。
ジャージの上から厚みのあるジャンバーを着用し手袋をはめて帽子をかぶると、お爺ちゃんみたいになりました。
耳当ての代わりにヘッドフォンを装着しました。
井の頭通りを歩きました。
呼び込みのお兄さんが、こちらを見ていたので音楽の音量を下げました。
『お父さんどうですか?』と言われました。
『誰がお父さんやねん』とは思いませんでした。
『そりゃそうやろ』と思いました。
裏参道から井の頭公園に入り池の回りを一周しました。
ジューシーズの児玉は僕があまりにも『散歩、散歩』と言うので、自分も深夜の井の頭公園を一人で散歩してみたらしいのですが、『途中からあまりにも怖くて走ってしまった』と言っていました。
その話を児玉から聞いた数日後、僕が深夜の井の頭公園を散歩していると、公園の出入口で児玉とバッタリ会いました。
『今日は一人で橋を渡れるか挑戦するんです』と言っていました。
『勝手に恐怖アトラクションみたいにするな』と思いました。
そして改めて、『いい大人が何言うてんねん』と思いました。
金色と赤色の落ち葉で埋め尽された井の頭公園はとても綺麗でした。
深夜と言っても、これなら全然怖くありません。
それに深夜散歩にはコツがあります。
それは絶体に怖い事を考えないことです。怖い事を考えたら負けです。
井の頭公園を一周すると、公園を東の方へ抜けて神田川と井の頭線の間の道を進みました。
途中、踏み切りが怖かったので早歩きをしました。
住宅街に入ると、何台もの新聞配達のバイクと擦れ違いました。
ヘルメットを着用していない人もいて、暴走族みたいでした。
いつの間にか三鷹台に着きました。5年ほど前まで住んでいた好きな町です。
タクシーで『三鷹台』と言うと、タクシーの運転手さんは解らない事が多かった記憶があります。
駅前には、井の頭公園から始まった神田川が流れ、バーガーショップがありコンビニがあります。
駅前の商店街は上りの坂道です。
喫茶店や定食屋があります。一際大きな光を放つコンビニがあります。
そのコンビニ前のベンチに座りました。
隣のベンチでカップラーメンを食べている人に睨まれました。
『一口もやらんぞ』という意気込みがひしひしと伝わって来て、『あのカップラーメンは幸せだな』と思うと同時に、『こっち見んなボケ』と思いました。
コンビニの前で雨宿りをしている女性がいました。
雨こそ降っていませんでしたが、その姿勢と表情は雨宿り以外のなにものでもありませんでした。
だけど、その女性の頭上には屋根が無かったので、もし雨が降っていたらずぶ濡れになるところでした。
もしかしたら空を見ていただけかも知れません。
その日にあった事をお月様に報告していただけかも知れません。
星が降って来たら全て当たらずによけれるかな?とシュミレーションをしていたのかも知れません。
僕は坂道を更にのぼり交番、中古CD屋を越えて左の小道に入りました。
小道に入った途端、どんどん夜が濃くなりましたが全然怖くありませんでした。
しばらく進むと、僕が昔住んでいた部屋がありました。
電気が付いていたので誰かが中で、まだ起きてるようです。
まさか部屋の住人は、前の住人が下から灯りを見ているとは知らないでしょう。
というか知らない方が良いでしょう。
知ってしまったら気持ち悪いでしょう。
前の自分の部屋を越えると広い畑があります。
この辺りになると真っ暗です。夜です。
それでも等間隔に街頭があるので完全な暗闇ではありません。
全部消えてくれないかなと思いました。
やっぱり全部消えると事故などが危険なので駄目だと思いました。
帰り道、踏み切りが怖いので遠回りして帰りました。
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